分類としてはラノベになると思う、「理想のヒモ生活」2巻まで読んでみた。とんでもないタイトルだが、だいたいそんな感じ。現代日本からファンタジー世界に突然召還された主人公が、巨乳美女な女王から婿になることを求められる話。異文化交流な感じがなかなか面白いです。
以下全力でネタバレ。
そもそも何故またわざわざ婿を異世界から召還しないといけないかというと、かの世界は長らくの戦乱がようやく収まったところで王家の血筋が絶えかけてるんだとか。それで唯一生き残ったヒロインが女王として統治しているのだけど、血筋を絶やすわけにいかないので結婚が急務。しかし男性上位の世界で下手に有力貴族などから婿を迎えると女王派と婿派で内乱になることが目に見えているので、できるだけそういう地縁や野心からほど遠い者がふさわしい。そして願わくば王家の血筋を引いている者…ということで異世界にその条件づけして召還をかけたらコンビニ弁当をぶらさげて自転車を押した主人公がいきなり呼ばれたという次第。
この血筋の重要性というのがまたユニークで、王家にはそれぞれ固有の魔法を使える特質があるらしい。主人公が呼ばれた国は時空魔法を持っていて、異世界からの召還もその一環。他には瞬間移動にも使えるみたい。他国では治癒魔法とか付与魔法とか、とにかくそれぞれ固有の魔法能力を王家の血が持っていて、それにより経済的な利益を得たり戦争での武力になったりで、国力の基礎としてきわめて重要なんだとか。魔法そのものは一般的な技能で誰でも修練を積めば使えるようになるが、個人の魔力には差があり、王家魔法はその血がないと能力を発現しない。つまり解釈を加えるなら、固有の遺伝子を持っていると特殊能力が発現して、そういう能力を持った一族が各地で繁栄を得て王家として今に至るという流れなのかも。従って結婚により一族の人数そのものを増やすことが急がれている。そして何故主人公が異世界の王家の血筋を持っているのかというと、150年ぐらい前になんかゴタゴタがあってそこの王子が時空魔法により現代日本に駆け落ちしてきたらしく、主人公はその末裔にあたるらしい。
…とまあこういう背景で進行する物語なのだけど、1巻はその異文化交流的な流れがメイン。社畜として日常に疲れていた主人公は考えた末に異世界への婿入りを決意、しかしかの地は中世風の文明レベルでまだ電気も無くしかもわりと暑い。なのでなんとか発電機と冷蔵庫やエアコンを持ち込まなければと四苦八苦してみたりする。さらには何となく持ち込んだビー玉やチョコレートなどが非常に珍重されるなど、文明格差を味わうところがしばしば。しかしこの文明格差、持ち込んだ物がことごとく貴重品になるのなら得意の時空魔法でもっといろいろ輸入しそうなものだけど、そのへんは矜持というものがあるのかな。あと異世界をつなぐのには星の配置とかも重要で、主人公初召還時には1ヶ月後にまたタイミングが合うのでそのときまでに準備してくれという流れだった(その間に発電機を用意したり身辺整理とかやった)けど、その後は30年ほど機会が来ないらしい。だからそれこそ王家の婿探しとか駆け落ちとか、異例の重要事態にしか利用しないってことなのかも?
で、新婚さんで子づくりも重要な課題だけあってか、わりとそっち方面の描写も出てきます。とはいえそのものの描写をじっくりやるわけでもなく、事前事後といった感じで、ちゃんとやることやってますよ的な。そして2巻最後にはついに王子誕生というイベントも。3巻以降はこの王子を巡るいろいろもありそうだな。
1巻では異文化交流とか夫婦交流とかが主体で、そもそも政治的には何もしないことが求められている主人公だからそれをいいことにほとんど王宮に引きこもってます。でも2巻になるとそういうわけにもいかなくて、特にヒロインが妊娠して公務に支障を来す状況になってくると代理で外に顔を出すことも。もちろん重要な交渉ごととかではなく、座っているだけでいいような公務など。そんな中でも王家の代表ではなくあくまで女王の名代だということを強調したり、権利欲をうかがわせたり有力者らに付け入る隙を与えないために側室の受け入れを拒否するなど、いろいろ涙ぐましい努力も見せています。主人公は立場上引きこもっているけどももともと営業職なので対外接触は苦手でもなく、そのへんのなかなかの頭の切れを見せてくれたりも。
ちなみにヒロインは巨乳美女なんだけど女王をやるだけあって毅然とした女傑のイメージで、戦士としても男性に引けを取らないらしい。かの地は男性上位の社会なので何事にも控えめな女性が好まれ、権力欲以外で婿になろうという男性はなかなかいなんだとか。そんなヒロインが、当初はあくまで王家のため国のためにという印象が強い結婚のイメージだったけど、徐々に主人公の誠実さに惚れ込んで行く様も魅力的だったり。
王家の維持のためには側室を取るのも当然となるのだけど、主人公が自らその気が無いのに加えて側室を取れない事情も2巻で発覚してきたりします。ほのぼのイメージの強かった1巻と比べて2巻では国内外からの権力への干渉が徐々に顕在化していく印象で、しかし王子も得て家族としての絆も強まって行く印象もあり、なんかこの一家を応援したくなる感じ。ヒモ生活といいつつなかなか婿殿も忙しいですw
これ表紙イラストもいかにもセクシー美女なイメージですが、1巻だとセクシークールビューティな感じだけど2巻以降は優しさもうかがえるのが印象的。