伊藤計劃「虐殺器官」「ハーモニー」読んだ。
コナミ小島氏と親交があってMGS4の小説版も手がけているとかでゲーマー的にも周知の作家であり、上述2冊でいきなり大きな評価を得ていたり、…そして若くして亡くなった作家であることも知っておりました。長編小説としてはMGS4も加えた3作のみが遺されているとかで、その早すぎる死を惜しむ声はあちこちで目にします。
そういう著名でありゲーム方面からも知られる作家なので両作は以前から気になっていたのですが、なんかえらく怖い話だというイメージがどこからか染みついていたのでなかなか手を出せずにおりました。
そんな中でいよいよ意を決して(?)、「虐殺器官」を読んでみた。…結論から言うと確かにホラータッチというか怖い話ではあるんだけど、トラウマ残るような後を引く怖さとかでは無い印象。いろいろ考えさせられるという意味では後を引きますが。基本SFサスペンスで、虐殺紛争を追う米軍特殊部隊の人が主人公。なのでわりとグロテスクな死の描写はあちこちに出てきます。でも一定の緊張間がずっと続く物語で、一気に読んでしまった。
その勢いで「ハーモニー」にも挑戦。こちらはとある女性が主人公で、高校生の頃や大人になった頃を行ったり来たり(別にタイムリープとかじゃなくて回想が入り交じる感じ)しながら様々な事件に絡んでいく感じ。こちらも前作ほど表面的じゃないけどかなり「死」のイメージがつきまとっています。
両作は独立した物語なのだけど、時間的には繋がっているようです。共通の登場人物とかは出てきませんが。ちょっと内容に触れたら全力でネタバレしそうなのであまり言及しませんが、物語としてはたいそう面白かったです。一気に読んだし。しかし世間ですげえすげえ言われてるのがどこがすげえのか、また怖いと言われていたような気がするのはどのへんなのかいまいちピンと来てない印象も。こればっかりはまあ私の読解力に問題ある可能性が大ですが… ていうかその才能の凄さを感じられない自分のセンスが憎い。作中の小難しい込み入った会話とかをしっかり咀嚼消化してないからか。
まあ怖いというのは、近未来の話なんだけど現代社会への警鐘になっている面があるからそのへんは怖いと言えば怖い。あと両作ともずーっと「死」がつきまとう話であるのは、作者がずっと闘病中であり、特に「ハーモニー」はほとんど入院中のベッドの上で執筆されたことと無縁ではないのでしょう。
ともかく、この人の作をもっと読みたかったなとは思うところです。とりあえず小説版MGS4も買いましたので読みます。