アニメをちょっと見て、その一種異様な世界観に(怖そうで)警戒しつつ惹かれるものを感じ、原作を読んでみた。文庫本で上中下3冊になってます。
舞台は1000年後の日本、文明社会は影を潜めて、牧歌的な社会で人々は「呪力」を使って生きています。いわゆる超能力で、主に念動力として発現する模様。これをきちんと使いこなせることを課題とする子供たちがまず主役。彼らが12歳・14歳・26歳で起きた事件をそれぞれ描いていくのだけど、結界に守られたのどかな田園風景の中で徐々に明かされていく社会の狂気がじわじわと攻めてきます。結界の外には様々な異生物がいて子供らはその外に出ることを禁じられているのだけど、12歳で課題の一環としてキャンプでその外に出たことで世界の真理の一端に触れ、そこまでと一変して様々な事件に巻き込まれて波瀾万丈の展開に。
世界観が深刻に不穏な背景を持っているであろうことはアニメの冒頭で描かれる謎の惨劇によって感じ取れるのだけど、徐々に不穏どころじゃなくなってきて色々大変なことに。読後感としては決してスッキリするものではなく、むしろいろいろ反芻して場面を思い起こしたり直接的な描写のなかったあたりについて思い巡らしてみたりという方向についつい思考が行ってしまいます。でも決して、怖さだけが残って後を引くホラーといった印象でも無かったりする。
いろいろグロテスクな描写も多いので今後のアニメ展開もそっち方向が心配ではありますが、まあ実写でやられるよりましかなとも思ったり… アニメと言えば、どこかで監督インタビューを見たのだけど、心理描写や世界説明といった詳説についてはあえて多くを語らないでいるんだとか。小説なら文章でひたすらそれらを説明できるのだけど、映像だと登場人物にやたら独り言を言わせることになりかねないし、このへんは難しいところだとも思う。しかし正直コレだと原作を読まないとまったく解らんことも多々なんじゃないかという危惧も。性描写、特に同性間のそれというのも作中では重要な意味を持つのだけど、TVアニメだと直接的にはできないし。これまで見たアニメでは卵の説明が全く無いのも気になったし、5話で洞窟に閉じ込められたあたりも何やってるのか解らんのじゃないかなーとも。
とりあえず色々な意味で印象深い作でした。同じ作者の「悪の教典」も映画が公開されてますが、こちらはもっとストレートなサイコホラーっぽいので手を出す気にはなれず。もともとSFよりホラーで有名な人みたいですし。