「クリス・クロス 混沌の魔王」読んでみた。SAOスレッドの話の中で、VRゲーム小説の草分けとして名前が挙がっていたので探してみた。そこでも、ほとんど中古でしか売ってないという話だったけども確かに書店では見当たらず、amazonにも在庫無く、中古で入手しました。なにしろ1997年の作で、第1回電撃大賞で金賞受賞しているらしい。…と思ったらまず1994年に出て、文庫化が1997年らしい。18年前か…
こういう入手難度の高いものこそ電子書籍化して欲しいのだけど、それも見当たらず。入手した本はかなり焼けて変色もしてましたが読むのには何の問題も無かったです。モノが古いだけに、これを自炊で取り込んでおいたほうがいいのかな。
確かにSAO同様に全感覚投入なVRMORPG(人数が限定されているのでMMOでは無い)なのだけど、特徴的なのはその仕組みで、全身に筋肉センサーを付けて頭には全方位モニタをかぶり、そして投薬と催眠で没入感を高めているという点。AWやSAOのように、頭部や首筋に機器を装着するだけというわけにはいかないけどそれだけにもしかしたら実現可能なんじゃないの? とも思わせる。さらに実行環境がスーパーコンピュータに256台の端末を接続しての限定テストという形で、全身に機器を接続する大がかりなものだから技術実験的なものということに。主人公ほかの登場人物は、このテストに応募して当選した人たちということになっています。
冒頭、主人公がシステムにアクセスしてさあ行くぞ、というところが数ページの漫画形式で提示されているのも興味深い。現在の電撃文庫だとストーリー抜粋のカラーイラストが出ているところです。絵柄もまあちょっと時代を感じさせるものではありますが、こういう導入ってのはあまり見たこと無いな。昔は結構あったんだろうか。
ゲーム内容はダンジョンRPGなのですが、どうもウィザードリィをベースにしている印象。ダンジョンの最奥部に待つボスキャラを目指す内容だし、職業も戦士・僧侶・魔法使い・盗賊といったお馴染みのものだし。罠や宝箱の扱いもウィザードリィっぽい。このへんも時代なんですかね。それでダンジョンをさまよううちに仲間を見つけてパーティを組んだり、いろんな人と出会ったりして先を目指す感じ。
250ページほどなのだけど、なんとなく本文もあまり密で無いというか文字数少なめな気がする。…と思ってSAOと見比べたら両方とも1ページ17行で同じだった。あれ? テンポ良く読めるせいなんでしょうか、とにかくわりとスッと読めました。ネタバレ無い範囲で感想を述べると、なかなか緊張感あって楽しめるし独特の読後感も残る感じでした。まあでもSAOと違ってなかなか続編は作りにくい構成…かな?
しかし1994年っていうと初代PSが出た年だ。オンラインゲームがぐっと身近になるPSOも2000年だし、まだオンラインゲームの片鱗もあったかどうかって頃じゃないですかね? ディアブロだって1997年だし、国内だとログイン誌がだいぶ昔から「電脳空間RPG!」を構想・提唱していたけど実現したとは聞かないし、とにかくまだまともな形が無い時代に未来的なVRオンラインゲームを提示して見せたのは凄いことなのかも。似ているという「クラインの壺」が1989年らしいから、こっちのほうが始祖と言えるのかな。とりあえずこっちも読んでみる。