小川一水「天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河」読んだ。ようやく登場の、待ちに待ったシリーズ5巻め。
いちおうネタバレあるので以下伏せます。
3巻以降は順当に時間が流れている感じですが、今回の舞台は小惑星の地下で営まれる農家。とそれと平行して、シリーズにずっと登場してきた謎の存在「ダダー」の出自が断章として交互に語られます。ダダーがどうやって誕生(発生?)してどういう流れを生きてきたのかがいきなり明らかにされ、同じくシリーズに共通している冥王斑の出所や、さらには3巻で出てきた謎の遺跡の出自も。このへんで過去については一通り明らかになった…んですかね? 問題は先のことで、いったい何がどうなって1巻の世界が形作られていったのか。これまでに電子部品を内蔵する羊とか蓄電放電自在な人類とか、中身は「?」でもいちおう姿形は現在の人間や生物と変わらないものたちで構成されてます…が、1巻ではちょっと人間離れというか人の姿をしてないけど人っぽい「種族」が出てくるので、そのへんどうなってるのかなと。さらに世界そのものがどうなってるのかと。まあ今巻でもダダーが巡った世界にはいろんな生物が出てくるわけですが。それにしても作者の小川氏は「老ヴォールの惑星」もそうだけど、異世界異生物を作り出して見せるのが凄いですわね。
ダダーと平行して語られる宇宙農家の苦悩もなかなか。私は農作業はたまの手伝い程度しか経験ないのだけど、作中でも肉体労働やら汚い臭いやら感染症やら大資本の制圧やら強欲陰険地主やらでいろいろ大変そうなのは現代農業そのままなのかも。それに加えて反抗期の娘に手を焼いているのがいちおうの主人公。いろいろ大変だ。
これで全10巻予定の半分が刊行されたことに。巻末のあらすじには「急展開のシリーズ第5巻」とあるけど、この巻の出来事が大枠の物語を大きく動かすわけでもないし、急展開なのは最後の1ページのことなんじゃないかと… これにより上記の人間離れした種族の登場に繋がるんですかね。いやそれとも、後になって思い出せばこの5巻がまさに急展開を示していた!ってことになるんだろか。とりあえず次が早く読みたいところです。年2巻ペースだと完結は2014年ですかね…