「迷宮最深部(ラスボス)から始まる美食(グルメ)探訪記」読み終えました。全98話、7ヶ月ぐらいで一気に完結まで行ったのね。タイトル通りに異世界転移してみたらダンジョン最深部のラスボスの前で、いろいろあってそのラスボスを人化させて同伴してダンジョンから脱出、異世界の美食や美酒を求めてさすらう話。主人公(と相方)は世界最強なんだけど、食事処や酒造所を守るために世界平和を目指すような感じになっております。ていうか最強すぎて戦闘自体は基本ワンパンで、食事や酒の描写にひたすら力が入っているという異色作だったりする。4章でスタンピードになって延々戦闘してるけどそれも片手間で、差し入れられる食事のほうが描写が丁寧だし。そして5章はその打ち上げパーティがあちこちで延々続くという一種異様な構成。まあ面白いんですけど。同じ作者の「ドリーム・ライフ」でも美食や酒を重視してる様子でしたが、そちらよりさらに特化したような構成。なかなか楽しかったです。作者氏によると同じ世界の外伝もいくつか構想があるみたいでちょっと楽しみ。書籍化とかされてビジュアルが世に出たら嬉しいなあ。なかなか長いタイトルなので略称どうしよう、「ラスボスグルメ」でわりと的を射ている気もする。
以下全力でネタバレ。
今作でとにかく特徴的なのはメインヒロイン?のウィズで、もともと暴虐の限りを尽くしていたドラゴンなのだけど暴れすぎて討伐されようとしても神ですら敵わず、なんとか封印することで抑えられたという存在。1000階層ダンジョンの最深部に封じられたのだけど、現在450層ぐらいしか踏破されてなくて1000年ぐらい経過して、当人(ドラゴンだけど)はもう早く来て解放(討伐)してくれ状態に。そこに現れたのが主人公で、「よくぞここまで来た…では頼むぞ」状態なんだけど弱すぎたので鍛えることになる。なにしろダンジョン最深部なので強化アイテムやら強力な装備やらには事欠かず、ダンジョンマスターなドラゴンによってどんどん提供されて、さらにはモンスター召喚で戦闘訓練&経験値稼ぎをして、1年間鍛えた末にようやく討伐。それでドラゴンは消滅してダンジョンの機能により主人公は解放されるのだけど、外を見たいと言っていたドラゴンの願いを叶えられないかとシステムに要請したら従魔として連れ出すことに。デカすぎるので人の姿になったら絶世の美女になった。それでウィズという名前を付けて相方として外に出ることに。
外に出たら今度は主人公のほうが、1年間の閉鎖生活により食い物に異様な反応を見せることに。そこから始まるグルメ探訪ツアーなのだけど、面白いのはウィズがどんどん飲食の楽しさに目覚めていくことですね。出会った人たちをどんどん飲み仲間認定していって、お前来いお前も来いと気さくに誘うのである。ウィズの本性を知る者には恐怖の対象なんだけど。基本ワガママで欲望(食欲)全開なんだけど、主人公が諭したらしぶしぶ従うあたりがちょっとカワイイ。最後のほうでは、恐怖で従う連中は多いけど叱ってくれるのはお前だけだと言うシーンもある。ずっと一緒にいるけど恋人関係というわけでもなく、一緒の部屋に泊まっても「元の姿を知るのでそういう気にならず」と語ってた。ラストにはその2人の関係の発展もにおわせつつ、やっぱり肉を求めて狩りを続けるぞという流れで終わってた。この2人がサポートキャラに回る外伝も構想されているというし、もっとこの世界を見てみたいですね。ていうかこの2人が子をなすことはできるんだろうか。子供ができたらまたそれで新たな物語が生まれそうだけども。まあオカンは子育てできそうにないからパパが苦労する話になるのかな。