以前から気になる小説ではあったんですが、なかなか凄惨そうな感じがして手を出さずにおりました。でもアニメ映画化したとかでまた書店で目立っていたので手に取ってみた。
確かに、凄惨な殺戮のシーンはそこかしこに出てきました。だけどもそこまで悪い方に響かない…というか、これがそのままにコミックやアニメになってビジュアルを伴ったら結構えらいことになりそうな感じはします。小説だどそのショックが薄いぶんだけ物語に集中出来る感じに。いや実際のところアニメもコミックも見てないんですが。
物語は3巻完結ですが、エピソードを分けているわけじゃなくて完全に繋がった連続した話です。1巻とか「この後どうなる!? 以下続く!!」みたいに終わるし。
以下ややネタバレ気味に。
基本的には、不幸な生い立ちから娼婦に身を落としていた少女が殺されかけて人を越えた能力を持って蘇り、自分を殺した男に復習する話です。凄惨な銃撃戦とか相手のエログロっぽさも映像的にどうなるんだろう大丈夫なんかいなと心配になったりしますが、何と言っても印象的なのは全3巻の中で2巻後半から3巻前半にかけてじっくりみっちり描かれるカジノのシーン。ここでルーレットやブラックジャックに挑む描写が何だか凄まじいことになっています。全体のまさに1/3をもって丹念に描かれるのだけど、とりあえずブラックジャックがこんなに熱いゲームだと初めて知りました。今までゲームで何回か実装したことはありますし友人ともちょこちょこプレイしたりもしましたが、もちろん現金を賭けての熱さもあるし、作中では人間を越えた計算・知覚の能力を使って歴戦のディーラーたちをねじ伏せるというとんでもなさもありますが、そのゲームの内包する熱さというものを少し感じられたような気もします。今後実装するならそういうのを少しでも入れられたらいいなあと思うぐらいの。しかしいずれにせよ高度な記憶とか計算が必要なのは間違いなさげで、自分でもプレイできるようにするならそのへんをどうシステムがサポートしつつ、熱も提供できるかが課題ですわね。
いろんなことを考えつつ、ともかく面白い話でした。しかし結構難解というか、文章の情報量が多い感じで、普段読むのが遅い自覚のある私ですがなおさら時間かかった印象が。しばしば漢字単語に英語カタカナのルビを振る場面も出てきたり、小難しい心理描写もよく出てきたり。しかもコレ、最初に書き上げてから10年ぶりの全体大改訂版らしいです。巻末の解説とか読むと、最初の版では荒削りながらも勢いがあったものを、その芯はそのままに洗練された文体でリライトしたようなモノらしい。物語自体はほとんど変わってないのだろうけど、その初版だったらもっといろいろ凄いことになってたのかな。観てみたい気もするけど怖い気もする。
劇場アニメのほうも、1巻と同じ「圧縮」のサブタイトルが付いているようだから同様に3部作なのかな。これも機会があったら観てみたいところ。