小川一水「天冥の標」が面白くて既刊3冊を一気に読んでしまった。面白いっていうかかなり凄惨な話だったりもするんだけど、引き込まれまくり。
既刊3冊は「I・メニーメニーシープ」が上下2冊、「II・救世群」が1冊です。作者氏が「次は3巻」と言ってるので、現行は3巻じゃなくて2巻3冊ということみたい。でその1巻のほうは西暦2800年代、現代地球の延長線上にある惑星開拓先での話。2巻でほとんど現代の地球、それも日本中心の話。かなり時間が飛んでるんだけど、1巻での事件の原点を2巻で追うような流れです。で2巻のほうで後の時代になる1巻で出てくるような用語等がちらほら姿を見せ、やんわりとした繋がりを感じさせます。このへんは大長編モノの醍醐味でしょうか。
全10巻を刊行予定で、この夏に出るという3巻が待ち遠しいところです。だいたい半年ごとの刊行なのかな。となると完結は4年後か…
小川一水というと「時砂の王」で引っ張り込まれて「第6大陸」「老ヴォールの惑星」「復活の地」と立て続けに読んだものでした。それぞれ面白かったのだけど、普段あまり本読まないのに一気に読んだせいかそこらへんで力尽き、しかし久々にまた読んでみたら面白かった次第。
以下ネタバレとアフィリエイト。
1巻のほうで冒頭で広がる感染症、これの発端が2巻で描かれるわけですけど、2巻の世界で虐げられた感染者たちが800年後の1巻の世界で暴れ回るモンスターになったということなのかな。1巻の世界では遺伝子操作により蓄電人間になった人たちとか件のモンスターとか、なんかいろいろ異形の人や生物が出てきます。
3巻は蓄電一族の話みたいだけど、これが1巻の前なのか後なのかは不明。雰囲気的には前なのかな。とにかく1巻と2巻の間がものすごく時間あいてるので、その間を今後の刊行で埋めてくれるのかも不明。特にその、両者間で共通する人名とか出てくると気になるよねえ… フェオドールのいきさつは想像しやすいけど。
しかしそれにしても、1巻2巻とも人が死にまくって救いのない話です。1巻は狭い植民惑星での感染症に始まって横暴な領主による圧政と戦争、しかしその裏には…といった展開。2巻は現代地球でその感染症に蹂躙される人類を描いています。中でも特に少数の回復者が虐げられる様子が描かれていて、彼らの復讐を予感させる形で終わっています。そして流れ的に1巻で出てくる「咀嚼者」と呼ばれる凶悪強靱なモンスターが彼らのなれの果てなんじゃないかと…しかも同じ個人名を持つ者すらいるし。
全10巻の長い流れの最初のほうでこれだけ救いのない話を出しておいて、これから人類がこの困難を克服していくんですかねえ。それとももっとアサッテの方角に突き進んでいくんでしょうか。とりあえず3巻が待ち遠しい。